無限テトレーション x^x^x^x…

この投稿では、\(f(x) = x^{x^{x^{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}}}\)という関数について考察する。
(特に実用性があるわけではなく、単なる興味の話)

キーワード

  • infinite tetration (無限テトレーション)
  • infinite power tower (無限冪)
  • infinitely iterated exponential

目次

テトレーションとW関数

考察の準備として次の2つの演算・関数について確認しておく。

テトレーション

例えば\(y=\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}}}\)という値を考えると、\(y\)は\(y_n=\sqrt{2}^{y_{n-1}}\)という漸化式で表される数列の極限と解釈することができる。しかし、「\(\cdots\)」という表記だけでは、初項\(y_0\)がどのような値であるかは読み取ることができない。実際、\(y_0=2\)のときは\(y=2\)になり、\(y_0=4\)のときは\(y=4\)となるので、初項についての取り決めは重要な問題になりそうである。

このように、「\(\cdots\)」という表記には曖昧さが含まれるので、より厳密に\(f(x) = x^{x^{x^{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}}}\)を次のように定義することにする。

テトレーション

実数\(x\geq 0\)に対して、\(f_n(x)\)を次のように定義する。

\begin{align} f_0(x) &:= 1 \\ f_n(x) &:= x^{f_{n-1}(x)} \end{align}

また、

\begin{align} f_{-1}(x) &:= 0 \end{align}

と定義しても\(f_0(x) = 1 = x^0 = x^{f_{-1}(x)}\)となって矛盾しないので、\(f_{-1}(x)\)をこのように定義することにする。

このように定義した\(f_n(x)\)を\(x\)のテトレーション(tetration)あるいは超冪と言う。
テトレーションは、「\(^nx\)」「\(x\uparrow\uparrow n\)」「\(x\uparrow^2 n\)」と表すこともあるが、ここでは\(f_n(x)\)と表記することにする。

無限テトレーション

\(n\to\infty\)としたテトレーションが、今回の考察の対象となる無限テトレーション\(f(x)=\lim_{n\to\infty}f_n(x)\)である。
「infinite tetration」の他に、「infinite power tower」や「infinitely iterated exponential」と呼ばれることもある。

\(x\)に対して\(f(x)\)が収束するとき、

\begin{align} f_n(x) &= x^{f_{n-1}(x)} \end{align}

であることから、両辺を\(n\to\infty\)とすると、

\begin{align} f(x) &= x^{f(x)} \end{align}

となる。
したがって、

\begin{align} f(x)^{1/f(x)} &= x \end{align}

となることから、\(f(x)\)が収束するような\(x\)の範囲では、\(f(x)\)は\(y^{1/y}\)の逆関数と一致することがわかる。
\(x=y^{1/y}\)のグラフは次のようになる。


\(x=y^{1/y}\)のグラフ

\(y\)に関する極限は

\begin{align} \lim_{y\to 0}y^{1/y} &= 0^\infty = 0 \\ \lim_{y\to\infty}y^{1/y} &= \lim_{y\to\infty}\exp\left(\frac{\log y}{y}\right) \\ &= \exp\left(\lim_{y\to\infty}\frac{\log y}{y}\right) \\ &= \exp(0) \\ &= 1 \\ \end{align}

となる。
また、

\begin{align} \frac{d}{dy}y^{1/y} &= \frac{d}{dy}\exp\left(\frac{\log y}{y}\right) \\ &= \frac{d}{dy}\left(\frac{\log y}{y}\right)y^{1/y} \\ &= \left(\frac{1}{y^2}-\frac{\log y}{y^2}\right)y^{1/y} \\ &= \left(1-\log y\right)y^{1/y-2} \\ \end{align}

となるので\(y^{1/y}\)は\((x,y)=(e^{1/e},e)\)で極大値を取り、\(x\)の最大値は\(e^{1/e}\)となる。
\(f(x)\)が収束するならば、\(y=f(x)\)に対してこの関係が成り立たなければならないので、\(x>e^{1/e}\)では\(f(x)\)は定義できないことがわかる。

LambertのW関数

関数\(W(x)\)を

\begin{align} x = W(x)e^{W(x)} \end{align}

を満たす関数(陰関数)と定義する。このようなLambertのW関数あるいは対数積(Product Logarithm)という。


\(x=ye^y\)のグラフ

\(x=ye^y\)のグラフは上図のようになり、\(W(x)\)は\(x\in\left(-\frac{1}{e},0\right)\)で多価であることがわかる。
そこで、\(W(x)\geq-1\)の部分を\(W_0(x)\)、\(W(x)\leq-1\)の部分を\(W_{-1}(x)\)と定義する。

特に\(\Omega:=W_0(1)=0.56714\cdots\)は(Lambertの)オメガ定数と呼ばれる。

微分

\(W(x)\)の定義の式

\begin{align} x = W(x)e^{W(x)} \end{align}

を\(x\)で微分すると、

\begin{align} 1 &= \frac{d}{dx}\left(W(x)e^{W(x)}\right) \\ &= W'(x)e^{W(x)} + W(x)W'(x)e^{W(x)} \\ &= W'(x)(1+W(x))e^{W(x)} \\ &= W'(x)(1+W(x))\frac{x}{W(x)} \\ \end{align}

となるので、

\begin{align} W'(x) = \frac{W(x)}{x(1+W(x))} \\ \end{align}

となる。

\(W_0\)と\(W_{-1}\)の関係

\(x\in\left(-\frac{1}{e},0\right)\)で2つの値\(W_0 > W_{-1}\)が、

\begin{align} W_0e^{W_0} = x = W_{-1}e^{W_{-1}} \end{align}

を満たすとき、\(d:=W_0-W_{-1}\in(0,\infty)\)とすると、

\begin{align} W_{-1}e^{W_{-1}} &= W_0e^{W_0} \\ &= (W_{-1}+d)e^{W_{-1}+d} \\ &= (W_{-1}+d)e^{W_{-1}}e^d \\ W_{-1}e^{-d} &= W_{-1}+d \\ \end{align}

となるので、

\begin{align} W_{-1} &= -\frac{d}{1-e^{-d}} \\ W_0 &= -\frac{d}{e^d-1} \\ \end{align}

と、共通の実数\(d\in(0,\infty)\)を用いて表すことができる。

また、これらの積を考えると、

\begin{align} W_{-1}W_0 &= \frac{d^2}{(1-e^{-d})(e^d-1)} \\ &= \frac{d^2}{(e^{d/2}-e^{-d/2})^2} \\ &= \left(\frac{d/2}{\sinh(d/2)}\right)^2 \\ \end{align}

となるが、一般に\(x>0\)のとき、

\begin{align} \sinh(x) &= \frac{1}{2}(e^x-e^{-x}) \\ &= \frac{1}{2}(2x+2\frac{x^3}{3!}+2\frac{x^5}{5!}+\cdots) \\ &= x+\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}+\cdots \\ &> x \end{align}

なので、\(\frac{d/2}{\sinh(d/2)}<1\)となり、

\begin{align} W_{-1}W_0 &= \left(\frac{d/2}{\sinh(d/2)}\right)^2 < 1 \end{align}

と言える。

上側区間における収束性

\(x\in[1,e^{1/e}]\)における\(f(x)\)の収束性を考察する。

無限テトレーションの陽関数表示

無限テトレーション\(y=f(x)\)において、\(y=x^y\)であることから、

\begin{align} 1 &= yx^{-y} \\ &= ye^{-y\log x} \\ -\log x &= -y\log xe^{-y\log x} \end{align}

となるので、

\begin{align} -y\log x &= W(-\log x) \\ y &= -\frac{W(-\log x)}{\log x} \end{align}

無限テトレーションはこのように(収束するならば)W関数を使って陽に表すこともできる。
\(t:=-\log x\)とすると、\((x,y)=\left(e^{-t},\frac{W(t)}{t}\right)\)とも表すことができる。


\(x=y^{1/y}\)のグラフ

\(y\)が多価となる区間\(x\in(1,e^{1/e})\)については、\(-\log x\in\left(-\frac{1}{e},0\right)\)なので、

\begin{align} W_{-1}(-\log x) < W_0(-\log x) \\ -\frac{W_{-1}(-\log x)}{\log x} > -\frac{W_0(-\log x)}{\log x} \end{align}

となることから、\(y\)が小さい方が\(y_0(x):=-\frac{W_0(-\log x)}{\log x}\)で、大きい方が\(y_{-1}(x):=-\frac{W_{-1}(-\log x)}{\log x}\)に対応していることがわかる。

ここで考えたことは\(f(x)\)が満たすべき必要条件でしかなく、もちろん実際の\(f(x)\)は多価になるはずがない。
\(f(x)\)がそもそも\([0,e^{1/e}]\)の範囲全体で収束するのか、収束するならばどちらに収束するのかということは、以下で詳しく考察する。

収束性

\(x\in[1,e^{1/e}]\)において、\(f(x)\)が収束して\(y_0(x)=-\frac{W_0(-\log x)}{\log x}\)と一致することを示す。

下図は\(z=y\)と\(z=x^y\)のグラフである。
\(z=1\)から右に進み始めて、\(z=y\)に当たったら上に、\(z=x^y\)に当たったら右に進むという操作を繰り返して線を引く。引いた線が\(z=y\)を通過した点が\(f_n(x)\)に対応するので、図から\(f_n(x)\)の極限を推測することができる。このような図で漸化式を調べる方法をクモの巣図法という。
この場合、\(z=y\)と\(z=x^y\)の小さい方の交点\(y=y_0(x)\)がその極限になりそうだということが推測される。


\(z=y\)と\(z=x^y\)のクモの巣図 (\(x=\sqrt{2}\))

\(x\geq1\)なので、\(x^s\)は\(s\)に対して(広義)単調増加
\(0<y_0(x)\)なので、

\begin{align} x^0 &\leq x^{y_0(x)} \\ 0 < 1 &\leq y_0(x) \end{align}

が成り立ち、これはすなわち、

\begin{align} f_{-1}(x) < f_0(x) \leq y_0(x) \end{align}

と同義である。
また\(f_{n-1}(x) \leq f_n(x) \leq y_0(x)\)となるとき、

\begin{align} x^{f_{n-1}(x)} \leq x^{f_n(x)} \leq x^{y_0(x)} \\ \end{align}

すなわち

\begin{align} f_n(x) \leq f_{n+1}(x) \leq y_0(x) \\ \end{align}

が成り立つ。
したがって帰納的に\(f_n(x)\)は\(n\)に対して単調増加であることが言え、更に\(f_n(x)\)は上に有界で特に\(f_n(x)\leq y_0(x)\)

このことから、\(f_n(x)\)は\(y_0(x)\)以下の値に収束することがわかる。
既に確認したように\(f_n(x)\)が収束するならばその値は\(y_0(x)\)か\(y_{-1}(x)\)にしかなれないが、\(y_0(x) < y_{-1}(x)\)となって\(y_{-1}(x)\)は\(f_n(x)\)が収束できる値の範囲の外にあるので、\(f_n(x)\)の極限は

\begin{align} f_n(x) &\to y_0(x) \\ &= -\frac{W_0(-\log x)}{\log x} \end{align}

\(\)

であることがわかる。

定義域の上限

\(x\in[1,e^{1/e}]\)のとき、

\begin{align} \lim_{n\to\infty}f_n(x) = -\frac{W_0(-\log x)}{\log x} \end{align}

2つの解の関係

余談だが、\(x\in(1,e^{1/e})\)における\(y=x^y\)の2つの解をW関数を用いずに表現する方法を紹介する。

2つの解を\(y_0, y_{-1}\)とすると次のようになる。

\begin{align} y_0^{1/y_0} &= x = y_{-1}^{1/y_{-1}} \\ \frac{\log y_0}{y_0} &= \frac{\log y_{-1}}{y_{-1}} \\ \frac{y_{-1}}{y_0}\log y_0 &= \log \frac{y_{-1}}{y_0} + \log y_0 \\ \end{align}

ここで、\(r:=y_{-1}/y_0\)とすると、

\begin{align} r\log y_0 &= \log r + \log y_0 \\ \log y_0 &= \frac{\log r}{r-1} \\ y_0 &= r^\frac{1}{r-1} \\ y_{-1} &= r\times r^{\frac{1}{r-1}} \\ &= r^{\frac{1}{r-1}+1} \\ &= r^\frac{r}{r-1} \\ \end{align}

となり、\(y=x^y\)の2つの解は共通の実数\(r\)を用いて\(r^\frac{1}{r-1}, r^\frac{r}{r-1}\)と表すことができることがわかる。

更に指数が整数となる場合を考える。\(n=\frac{1}{r-1}\)としたとき\(r=\frac{n+1}{n}\)なので、2つの解は

\begin{align} y_0 &= \left(\frac{n+1}{n}\right)^n \\ y_{-1} &= \left(\frac{n+1}{n}\right)^{n+1} \\ \end{align}

となり、それぞれ有理数である。
これらは\(n\to\infty\)としたときそれぞれ下と上から\(e\)に収束する。

\(n\) \(y_0\) \(y_{-1}\) x
1 \(2\) \(4\) \(\sqrt{2}\)
2 \(9/4\) \(27/8\) \(\left(\frac{3}{2}\right)^{8/9}\)
3 \(64/27\) \(256/81\) \(\left(\frac{4}{3}\right)^{81/64}\)
4 \(625/256\) \(3125/1024\) \(\left(\frac{5}{4}\right)^{1024/625}\)

特に\(n=1\)の場合は\(2 = \sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}}}\)となり、これは無限テトレーションに関するやや有名な一例として知られる。

下側区間における収束性

\(x\in[0,1)\)における\(f(x)\)の収束性を考察する。

偶奇の場合分け

\(x\in[0,1)\)においても同様に、まずはクモの巣図を見てみる。


\(z=y\)と\(z=x^y\)のクモの巣図 (\(x=0.2\))

\(z=y\)と\(z=x^y\)のクモの巣図 (\(x=0.05\))

図を見ると、\(f_n(x)\)には単調性がなく、\(n\)が1増えるごとに値の上下を交互に繰り返すことが推測される。
また、\(x=0\)付近では\(f_n(x)\)は収束しないことが推測される。

ここで、\(f_n(x)\)を\(n\)が奇数のときと偶数のときに分けて考えることにする。

\begin{align} g_n(x) &:= f_{2n}(x) \\ g(x) &:= \lim_{n\to\infty}g_n(x) \\ \end{align}

\begin{align} h_n(x) &:= f_{2n-1}(x) \\ h(x) &:= \lim_{n\to\infty}h_n(x) \\ \end{align}

このとき、

\begin{align} g_0(x) &= f_0(x) = 1 \\ g_n(x) &= x^{h_n(x)} = x^{x^{g_{n-1}(x)}} \\ \end{align}

\begin{align} h_0(x) &= f_{-1}(x) = 0 \\ h_n(x) &= x^{g_{n-1}(x)} = x^{x^{h_{n-1}(x)}} \\ \end{align}

となり、それぞれ収束するならば

\begin{align} g(x) &= x^{x^{g(x)}} \\ h(x) &= x^{x^{h(x)}} \\ \end{align}

という関係が成り立つことがわかる。

g, hの収束性

\(x\in(0,1)\)において、次のことを示す。

  • \(g_n(x)\)は単調減少し、常に\(g_n(x)\geq y_0(x)\)
  • \(h_n(x)\)は単調増加し、常に\(h_n(x)\leq y_0(x)\)

ただし、\(y_0(x) := -\frac{W(-\log x)}{\log x}\)であり、これは\(z=y\)と\(z=x^y\)の交点である。

\(x<0\)なので、\(x^s\)は\(s\)に対して(狭義)単調減少
\(0<y_0(x)\)なので、

\begin{align} x^0 &> x^{y_0} \\ 1 &> y_0(x) \\ \end{align}

が成り立つ。これを更にもう1回繰り返すと、

\begin{align} x^1 &< x^{y_0(x)} \\ 0 < x &< y_0(x) \\ \end{align}

が成り立ち、これはすなわち、

\begin{align} h_0(x) < h_1(x) < y_0(x) \end{align}

である。

また\(h_{n-1}(x) < h_n(x) < y_0(x)\)となるとき、

\begin{align} x^{h_{n-1}(x)} > x^{h_n(x)} > x^{y_0(x)} \end{align}

すなわち

\begin{align} g_{n-1}(x) > g_n(x) > y_0(x) \end{align}

が成り立つ。
逆に、\(y_0(x) < g_n(x) < g_{n-1}(x)\)となるときも、

\begin{align} x^{y_0(x)} > x^{g_n(x)} > x^{g_{n-1}(x)} \end{align}

すなわち

\begin{align} y_0(x) > h_{n+1}(x) > h_n(x) \end{align}

が成り立つ。
したがって帰納的に、

  • \(g_n(x)\)は単調減少し、常に\(g_n(x) > y_0(x)\)
  • \(h_n(x)\)は単調増加し、常に\(h_n(x) < y_0(x)\)

であることが言え、\(g(x), h(x)\)はそれぞれ収束する。
\(g(x), h(x)\)が一致するとき\(f(x)\)は収束し、一致しないときは振動発散すると言える。この先は\(g(x), h(x)\)が一致する条件を調べる。

xをyの陽関数で表示

\(g(x), h(x)\)はそれぞれ

\begin{align} g(x) &= x^{x^{g(x)}} \\ h(x) &= x^{x^{h(x)}} \\ \end{align}

を満たさなければならない。
そこで、\(y=x^{x^y}\)とすると、

\begin{align} \log y &= \log xx^y \\ &= \log x e^{y\log x} \\ y\log y &= y\log x e^{y\log x} \\ W(y\log y) &= y\log x \\ \log x &= \frac{W(y\log y)}{y} \\ x &= \exp\left(\frac{W(y\log y)}{y}\right) \\ \end{align}

となり、\(x\)を\(y\)の関数で表すことができる。
\(W_0\)の場合\(x = x_0(y) := \exp\left(\frac{W_0(y\log y)}{y}\right)\)と、\(W_{-1}\)の場合\(x = x_{-1}(y) := \exp\left(\frac{W_{-1}(y\log y)}{y}\right)\)を下図に示す。\(g(x), h(x)\)が収束するならばこのグラフ上の点ということになる。
なお、\(y=x^y\)の解\(y=y_0(x)\)もまた\(y=x^{x^y}\)を満たすので、\(y=x^{x^y}\)の解には\(y_0(x)\)も含まれる。


\(x = x_0(y) := \exp\left(\frac{W_0(y\log y)}{y}\right)\)、\(x = x_{-1}(y) := \exp\left(\frac{W_{-1}(y\log y)}{y}\right)\)のグラフ

この2つのグラフが\(y>0\)で交わる(接する)点が存在するとするなら、\(W_0(y\log y) = W_{-1}(y\log y) \)とならなければならないので、

\begin{align} y\log y &= -\frac{1}{e} \\ &= \frac{1}{e}\log\frac{1}{e} \\ y &= \frac{1}{e} \\ \end{align}

\begin{align} x &= \exp\left(\frac{W\left(-\frac{1}{e}\right)}{y}\right) \\ &= \exp\left(\frac{-1}{\frac{1}{e}}\right) \\ &= \exp\left(-e\right) \\ &= \frac{1}{e^e} \\ \end{align}

となり、接点は\((x,y)=(e^{-e},e^{-1})\)となる。

\(x = \exp\left(\frac{W(y\log y)}{y}\right)\)の微分についても考察する。以後、\(W(y\log y)\)を単に\(W\)と略記する。

\begin{align} \frac{dx}{dy} &= \frac{d}{dy}\exp\left(\frac{W}{y}\right) \\ &= \frac{d}{dy}\left(\frac{W}{y}\right)\exp\left(\frac{W}{y}\right) \\ &= \left(\frac{1}{y}W'(y\log y)\frac{d}{dy}(y\log y)-\frac{W}{y^2}\right)\exp\left(\frac{W}{y}\right) \\ &= \left(\frac{1}{y}\frac{W}{y\log y(1+W)}(1+\log y)-\frac{W}{y^2}\right)\exp\left(\frac{W}{y}\right) \\ &= \frac{W\exp\left(\frac{W}{y}\right)}{y^2\log y}\frac{1}{1+W}\left( 1+\log y - \log y(1+W) \right) \\ &= \frac{W\exp\left(\frac{W}{y}\right)}{y^2\log y}\frac{1}{1+W}\left( 1-\log yW \right) \\ \end{align}

この式の符号を調べる。

\(1+W\)は\(W_0\)の場合と\(W_{-1}\)の場合で異なり、

  • \(1+W_{-1}<0\)
  • \(1+W_0>0\)

\(1-\log yW\)に関しては、\(\log y e^{\log y}=y\log y\)となることから、\(\log y=W(y\log y)\)とできることを利用する。これが\(W_0\)になるか\(W_{-1}\)になるかは\(y\)の値によることに注意。

  • \(0<y<\frac{1}{e}\)のとき\(\log y<-1\)なので、\(\log y=W_{-1}(y\log y)\)
    • \(1-\log yW_0 = 1-W_0W_{-1}\)
    • \(1-\log yW_{-1} = 1-W_{-1}^2\)
  • \(\frac{1}{e}<y<1\)のとき\(-1<\log y<0\)なので、\(\log y=W_0(y\log y)\)
    • \(1-\log yW_0 = 1-W_0^2\)
    • \(1-\log yW_{-1} = 1-W_0W_{-1}\)

\(W_0\in(-1,0)\)なので\(W_0^2<1\)、\(W_{-1}\in(\infty,-1)\)なので\(W_{-1}^2>1\)。
またW関数の解説の際に考察したように常に\(W_0W_{-1}<1\)。
したがって、

\begin{align} 1-W_0^2 &> 0 \\ 1-W_{-1}^2 &< 0 \\ 1-W_0W_{-1} &> 0 \\ \end{align}

となる。

残りの部分は、

  • \(W\)は\(W_0, W_{-1}\)どちらの場合でも\(W<0\)
  • \(\exp(W/y)>0\)
  • \(y^2>0\)
  • \(\log y < 0\)

なので、\(\frac{W\exp\left(\frac{W}{y}\right)}{y^2\log y}>0\)となって\(\frac{dx}{dy}\)の符号には影響しない。

これらをまとめると、次のように\(\frac{dx}{dy}\)の正負を判定できる。

関数 yの区間 \(\frac{W\exp\left(\frac{W}{y}\right)}{y^2\log y}\) \(\frac{1}{1+W}\) \(1-\log yW\) \(\frac{dx}{dy}\)
\(x = x_0(y) = \exp\left(\frac{W_0(y\log y)}{y}\right)\) \((0,e^{-1})\) + + \(1-W_0W_{-1}>0\) +
\((e^{-1},1)\) + + \(1-W_0^2>0\) +
\(x = x_{-1}(y) = \exp\left(\frac{W_{-1}(y\log y)}{y}\right)\) \((0,e^{-1})\) + - \(1-W_{-1}^2<0\) +
\((e^{-1},1)\) + - \(1-W_0W_{-1}>0\) -

\(x = x_0(y) := \exp\left(\frac{W_0(y\log y)}{y}\right)\)、\(x = x_{-1}(y) := \exp\left(\frac{W_{-1}(y\log y)}{y}\right)\)のグラフ

この結果から、\((x,y)=(e^{-e},e^{-1})\)を起点に、\(x=x_0(y)\)の\(e^{-1}<y\)の部分だけが\(e^{-e}<x\)の部分に値を持つことがわかる。
したがって、\(y=x^{x^y}\)は、

  • \(e^{-e}\leq x\)の区間には最大1個
  • \(0<x<e^{-e}\)の区間には最大3個

の解\(y\)が存在することがわかる。
(ちょうど3個と言い切れない理由は、\(x\)に対応する3つの\(y\)の中で同じ値になるものが存在しないことをここではまだ確かめていないから)

fの収束性

収束する部分

微分による考察では、\(x\in[e^{-e},1)\)において\(y=x^{x^y}\)の解は1つしかないことを確かめた。
\(g(x), h(x)\)は共に\(g(x)=x^{x^{g(x)}}, h(x)=x^{x^{h(x)}}\)となる必要があるので、これらは\(y=x^{x^y}\)の唯一の解\(y=y_0(x)\)に収束するしかない。
したがって\(g(x)=h(x)\)となって上極限と下極限が一致するので、\(x\in[e^{-e},1)\)では\(f(x)\)は収束すると言える。

定義域の下限

\(x\in[e^{-e},e^{1/e})\)のとき、

\begin{align} \lim_{n\to\infty}f_n(x) = -\frac{W_0(-\log x)}{\log x} \end{align}

振動発散する部分

\(x\in(0,e^{-e})\)においては、\(x\)ごとに最大3個の\(y=x^{x^y}\)の解が存在し得ることがわかっている。
特に\(y>e^{-1}\)の領域に存在する解\(x=\exp\left(\frac{W_{-1}(y\log y)}{y}\right)\)は、その存在範囲から明らかに\(y=x^y\)の解とは異なる。その解を\(y=a(x)\)と表すことにする。
\(a(x)\)は\(y=x^{x^y}\)の解であるが、\(y=x^{y}\)の解ではないので、\(a(x)\neq x^{a(x)}\)となる。これを\(b(x):=x^{a(x)}<a(x)\)とすると、

\begin{align} x^{x^{b(x)}} &= x^{x^{x^{a(x)}}} \\ &= x^{a(x)} \\ &= b(x) \end{align}

となり、\(b(x)\)は\(y=x^{x^y}\)の\(a(x)\)とは異なる解であることがわかる。更に、\(x^{b(x)}=a(x)\neq b(x)\)なので、\(b(x)\)も\(y=x^y\)の解ではないことがわかる。
\(a(x), b(x)\)について次の関係が成り立つ。

\begin{align} a(x) &= x^{b(x)} \\ b(x) &= x^{a(x)} \\ b(x) &< a(x) \end{align}

また、\(y_0(x)<a(x)\)であることから、\(b(x) = x^{a(x)} < x^{y_0(x)} = y_0(x)\)となるので

\begin{align} b(x) < y_0(x) < a(x) \end{align}

となる。
\(y_0(x), a(x), b(x)\)は全て\(y=x^{x^y}\)を満たす解であり、上記の式からそれぞれ異なる値となることがわかるので、その大小関係からグラフの\(y_0(x), a(x), b(x)\)に対応する部分がそれぞれ判明する。


\(y_0(x), a(x), b(x)\)のグラフ

\(g_n(x), h_n(x)\)それぞれの収束性を示したときと同様に考えると、まず

\begin{align} 0 &< b(x) \\ 1 = x^0 &> x^{b(x)} = a(x) \\ 0 < x = x^1 &< x^{a(x)} = b(x) \\ \end{align}

すなわち、

\begin{align} h_0(x) < h_1(x) < b(x) \\ \end{align}

である。

\(h_{n-1}(x) < h_n(x) < b(x)\)となるとき、

\begin{align} x^{h_{n-1}(x)} > x^{h_n(x)} > x^{b(x)} \\ g_{n-1}(x) > g_n(x) > a(x) \end{align}

となり、更に

\begin{align} x^{g_{n-1}(x)} < x^{g_n(x)} < x^{a(x)} \\ h_n(x) < h_{n+1}(x) < b(x) \end{align}

も成り立つ。

したがって帰納的に\(g_n(x)\)は単調減少で、常に\(g_n(x)>a(x)\)
\(y=a(x)\)より大きい\(y=x^{x^y}\)の解は存在しないので、

\begin{align} \lim_{n\to\infty} g_n(x) = a(x) \end{align}

と言えて、更に

\begin{align} \lim_{n\to\infty} h_n(x) &= \lim_{n\to\infty} x^{g_{n-1}(x)} \\ &= x^{a(x)} \\ &= b(x) \\ \end{align}

となる。つまり、\(a(x)=g(x), b(x)=h(x)\)である。

振動発散する区間

\(x\in(0,e^{-e})\)のとき、\(f_n(x)\)は収束せず振動発散する。
また、

\begin{align} g(x) &:= \lim_{n\to\infty}f_{2n}(x) \\ h(x) &:= \lim_{n\to\infty}f_{2n-1}(x) \\ \end{align}

はそれぞれ収束して、次の大小関係が成り立つ。

\begin{align} h(x) < -\frac{W_0(-\log x)}{\log x} < g(x) \end{align}

また、\(x=0\)の場合を考えると、\(0^0=1, 0^1=0\)となることから\(f_n(0)\)は0と1を交互に繰り返すことがわかる。
よってこれも上記の結果に含めることができ、\(x\)の範囲を\(x\in[0,e^{-e})\)に拡げることができる。

まとめ

まとめ

これまでの考察をまとめる。

無限テトレーションの収束性

実数\(x\geq 0\)に対して、テトレーション\(f_n(x)\)を次のように定義する。

\begin{align} f_{-1}(x) &:= 0 \\ f_0(x) &:= 1 \\ f_n(x) &:= x^{f_{n-1}(x)} \end{align}

\(x\in(e^{1/e},\infty)\)のとき

\(f_n(x)\)は無限大に発散する。

\(x\in[e^{-e},e^{1/e}]\)のとき

\(f_n(x)\)は次の値に収束する。

\begin{align} f(x) &:= \lim_{n\to\infty}f_n(x) \\ &= -\frac{W_0(-\log x)}{\log x} \end{align}

また、\(y=f(x)\)のとき\(x = y^{1/y}\)が成り立つ。

\(x\in[0,e^{-e})\)のとき

\(f_n(x)\)は収束せず振動発散する。
また、

\begin{align} g(x) &:= \lim_{n\to\infty}f_{2n}(x) \\ h(x) &:= \lim_{n\to\infty}f_{2n-1}(x) \\ \end{align}

はそれぞれ収束して、次の大小関係が成り立つ。

\begin{align} h(x) < -\frac{W_0(-\log x)}{\log x} < g(x) \end{align}

また、\(y=g(x)\)のとき

\begin{align} x = \exp\left(\frac{W_{-1}(y\log y)}{y}\right) \end{align}

が成り立ち、\(y=h(x)\)のとき

\begin{align} x = \exp\left(\frac{W_0(y\log y)}{y}\right) \end{align}

が成り立つ。


考察のまとめ

初項が1以外の場合

これまではテトレーションの定義に沿って初項\(f_0(x)=1\)の場合を考察してきたが、初項がそれ以外の値のときについても考えてみる。
初項\(u\)に対して数列\(f_n(x|u)\)を次のように定義する。

\begin{align} f_0(x|u) &= u \\ f_n(x|u) &= x^{f_{n-1}(x|u)} \\ \end{align}

その収束の様子は次の図のようになる。縦軸が初項\(u\)を表す。


初項が1以外の場合の収束の様子

赤の領域は\(y_0(x)\)に収束、橙の領域は無限大に発散。
青の領域は振動発散するが、偶数項は青線\(a(x)\)に、奇数項は緑線\(b(x)\)に収束する。

赤線と橙線の線上では\(u=x^u\)が成り立つので、\(f_n(x|u)\)は定常な値を取る。(平衡点)
特に赤線に関しては、その上下から始まる数列\(f_n(x|u)\)は赤線に収束していく。(安定平衡点)
一方橙線に関しては、わずかにずれた位置から始まる数列\(f_n(x|u)\)は橙線から離れていく。(不安定平衡点)

また、青線は\(f_n(x|u)\)の偶数項の安定平衡点、緑線は奇数項の安定平衡点となる。

これらの証明はここでは細かく説明しないが、これまでと同様の方法で証明できる。

参考

このテーマについて言及しているページを見つけられた限り列挙する。(細かく読んでいないものも含む)

定義域の上端と下端について考察

定義域の上端のみについて考察

応用

動画

その他参考